一人きりの世界には慣れたつもりで居た。
でも結局は慣れる事なんかなくて、淋しいって言う思いにただただ蓋をして心の奥底の深い所に終い込んでいただけだったのかも知れない。
その現実に気が付いたのはやっぱりあの人に出会ってからで、その感情が溢れ出したのもあの人に出会ってからだった。
自分自身の中にあんな物が隠れていたのかと思うと少し嫌悪するし、自分自身ですら驚いたのに、他人が驚かない訳がない。
嗚呼、バカだな。あんな姿を曝してしまうなんて。
でもきっと、俺はあの人の前だったから曝け出したのかも知れない。
感情をセーブしていた物が取り払われた瞬間、きっと俺の中に存在していた"何か"が弾けたんだと思う。
それでないと、俺がここまで人に依存する事なんか可笑しい。
あの人もそれが目的で俺の傍に居た訳じゃないだろうし…。
「まだ帰らへんの?」
「もうちょいやって帰ります。先帰ってもええですよ」
「アホ抜かせ、一緒に帰る言うたやろ」
「………早よします」
「ええよええよ。ゆっくりやり」
「…はい」
温かいコトバをくれた。
温かいキモチをくれた。
温かい をくれた。
待つのは嫌いじゃない。
追いかけるのも嫌いじゃない。
ただ嫌なのはあの人に拒絶されてこの腕を離される事。
そんなんやる筈がないってわかってるけど、不安。
怖い。
心配で心配で仕方なくなる。
根こそぎ、すぐに無くなる不安だったらそんなのは不安じゃないと、そう言ってくれたのもあの人で、
人はみんな、不安の上に成り立って生きてて、不安に潰されそうになりながら生きているだって教えてくれた。
それでも、拭いきれなくても、ちょっとずつ軽くして行く事は出来る。
そう言ってくれたのもあの人。
俺の不安を取り除いてくれるののはあの人
あの人の不安を取り除くのは俺
(何年先もずっと一緒に居りたい)(押し潰されそうな不安は)(二人で溶かしてく、)