「俺は、謙也さんの役に立てるんやったら何でもやりたい」
久々に会った恋人に言われた言葉は、それはもう衝撃的だった。
どうやったらそういう考えに行き着く事が出来るのか最初から最後まで説明して欲しいくらいだ。
勿論子供でも分かるように、だ。
「え…?ちょ、光…どないしたん?」
「俺は謙也さんにとってのナニですか?」
「恋人、やん?」
「俺は此処に存在してますか…?」
「…ハ?」
この一言で光が情緒不安定なんだとやっと分かった。
光は、俺と離れてから月一で情緒不安定に陥る。
俺が居ても居なくても、何時、どんな時に、何が切っ掛けで。
経緯は様々だけれど決まって言うのが"存在しているか"と云う事だった。
「今…、また不安定になってめんどって思いました?」
「そんなん思てないって」
「嘘や…。やってこんなん面倒やないですか。ホンマは捨てたいんでしょ、」
「ネガティブに考えんな」
「ムリ…」
泣きそうな瞳を見ると戸惑ってしまう。
何が光を不安定にさせているのかその原因もその思考も何もかもが俺には理解し難い物だった。
例えばそう、俺と光が一つに溶けて交わってしまえばそんな不安も、理解できない感情もなくなって同じ物だけを共有できるだろう。
例えばそう、俺と光が永遠に一つに交わる事の出来ない存在だったら、俺たちは互いに別々の感情を見つけ、それを共有しようと、伝えようと求めるだろう。
別々の存在だからこそ、互いを求め合う。
同じ存在ならば出逢う事は叶わなかった。
「ぐちゃぐちゃに溶け合えたらええのに」
涙声で言う君のその言葉に
俺は何一つ共感できないけど
ぐちゃぐちゃに溶け合ってしまえば
俺は君を愛おしいと思えない