近くに居るのに、近くに居ない。





矛盾してる?





でもコレはホントの事。





近くに居るのに、アナタは近くに居ない。





きっと、





あの頃の方がずっとずっと近かった。



































「謙也さん?」

















家に帰れば部屋は真っ暗だった。


休憩中に謙也さんから来たメールには帰りが早くなったとあったのに、部屋は真っ暗で、リビングにも明かりなんて灯ってない状態。
不思議に思って、全てのドアを開けた。
でも、そこに謙也さんの姿は何処にもなかった。








不安









その一言に尽きる気持ちだった。

お互いに大学を出て、社会人になった今じゃ絶対的にすれ違う生活になってしまう。
謙也さんは医者で、俺はアルバイター。
擦れ違わない訳がない。

















( 何 処 に 行 っ た ん ? )

















最悪な展開しか脳裏に浮かんでこなくて、涙が溢れた。

昔はこんなに弱かった訳じゃないのに。
年々、一緒に居る年月が過ぎるごとに俺の心は脆く壊れ易く、傷付き易い物に変わって行った。

こんな心はいらない。
こんな思いは要らない。
そう思い続けながら、俺はずっと隠してきた。
重いなんて思われたくなくて、否定して欲しくなくて、



































「…光?」

















何処か遠くの方で俺を呼ぶ声がした。





愛おしい、





愛おしい声。











良かった。





俺はまだ、独りじゃない。











「けん、や…、さん?」


「ちょ、どないしたん!?」


「なんでも、ないです」











謙也さんの匂いに包まれる。





嗚呼、やっぱり俺は、





この人じゃないとダメだ











「なんもないわけないやろ?こんな泣いとんのに…、」


「うっさいっすわ」











遠い近いの問題じゃないのかな?
その人の傍に居て安心出来るか、どうかの違い?
答えなんて、俺は知らない。
でも、でもね、























「そや!光コレ食べたいって言うとったやろ?帰り覗いたらあってさ、遅なってゴメンな?」











アナタの中心は俺で構成されてる





俺の中心はあなたで構成されてる





なんてステキな事