出会えた事は軌跡に近い。
まだまだある長い時間の中で一生もんの人間を見つけられるかどうかっちゅーんは、ないに等しい世界やのに、うちはそんな人を見つけてしまった…。
初めて人を好きになった訳やない。
それなりに恋愛はしてきとるし、恋人やって人並みには居った。
それでも、この人だけは今まで付き合ってきたどんな人等とも全然違っとって…、うちのどんな悪い所でも、なんでも全部受け入れてくれる人やった。
最初はうちの一目惚れ。
放課後、一人で誰にも見つからんような場所で自主練やっとる時に話しかけられたんが切っ掛けやった。
うっとぉしい先輩やなぁ、て思たし、誰にも見つからへんとこでやっとるって思っとったからムカついた。
けど、なんや知らへんけど毎日其処に来るよぅなって、色々アドバイスしてくれたり、うちがムリせぇへんように見ててくれた。










「あんまし、気ぃ張るんやないで?」










偶にうちがホンマに疲れとる時にはすぐに気ぃ付いて言うてくれる。
そんな優しい所に引かれて、少しでも好みの女の子になれるように自分なりに一生懸命努力した。
どうにもならへんとこもあったけど、ホンマにちょっとでも好きやって思って貰えるように。
髪やって黒く染めたし、流行のファッションやって雑誌見たりして勉強した。
本気で恋したんはコレが初めてやったからクラ先輩に相談したりして、謙也さんが好きなもんも嫌いなもんも色々教えて貰た。
努力した甲斐あってか知らへんけど、告白したらOKくれて、そん時は自分でも大げさやって思うくらい、今やったら死んでもええ!って思た。
でもホンマに偶にやけど不安になる時がある。
うちみたいな可愛げのない後輩を彼女にして謙也さんの評価が落ちてへんかって…。
クラ先輩とかちぃ先輩とかユウ先輩やったら逆に付き合っとってお似合いやって言われるかも知れへんのに…。
何の取り得もないうちみたいなんと付き合って、損してないんかって、不安になる。









「何で謙也さんはうちと付き合ってくれたんですか?」
「どないしたん?誰かに何か言われたんか?」
「そぉやないですけど…。やって変やないですか」
「どこが変なん?」
「………謙也さんの周りにはこの学校でも美人やって言われとるクラ先輩にちぃ先輩、影で人気あるユウ先輩が居るのに、うちみたいな可愛くもなんともない後輩と付き合ってくれるやなんて…、変や」
「ちっとも変なことなってあらへんよ。光は自分の事過小評価し過ぎなんや、やからそうやって考えてまうんやない?」
「そんなことありません、みんなホンマはそぅ思てますわ」
「そんな事あるわけないやろ?そんな奴居ったら俺がそいつがわかるまで何百回、何千回と言うたるし、そりゃ、白石も千歳もユウも学校で人気なんは判る。ええ奴やし。でもな、俺は恋愛対象として見たことなんか一回もあらへんのや。光は十分可愛ぇし、コレは白石も言うとった。十分自信持ってええ事なんやで」
「そんなこと言われましても…、うち、胸あらへんし」
「そんなんこれからどぉとでもなる!女は胸で決まる訳やない!やから過小評価せんと、オレん事信じ」









そう言うて髪をぐしゃぐしゃに乱された。
こぉやって頭撫でるんが謙也さんの癖やった。
最初のうちはワックスとかとれてまうから止めて欲しかったけど、頭撫でるんは、あんましスキンシップせぇへん(ただ端にヘタレなだけやねんやろうけど)謙也さんなりの愛情表現。
それがわかった時は嫌われてないんやってちょっと安心した。
生意気な事しか言えへんうちには、どこが可愛ぇんかよぉわからへんけど、取り合えず謙也さんが言うんやから受け入れる事にした。









「うちにアカンとこあったらいつでも言うて下さいね」
「…やから、光は今のままでええんやって」
「わかっとります。今のままでええって言って貰えとるうちはええんです。でも、コレから先、謙也さんが少しでもうちのとった行動とかでアカンって思たとこあったら言うて欲しいんです。人って自分じゃアカンとこ見つけらんくて、知らんうちに他人に不快な思いさせとることが良ぉあるから…、そんなんでうちは謙也さんに嫌われとぉないんです」
「気にせんでええってホンマに、俺は今の光ん事好きになっとるんやから。これから先も嫌いになる事なんて絶対にあらへん」









いつまでうちに笑顔向けてくれるか判らへんけど、一緒に居るうちは嫌なとこ見せたないし、我侭なんか言わへんつもりや。
困らせたいわけやないもん。
ホンマに好きやったら頼ったらええって事も解ってるつもりやし、友達にも言われるけど、うちはそんなつもりない。
好きやからこそ、普段よりももっと意地張ってまうし、素直に物事言えへんから…。



















(謙也さんはそのままでええって言ってくれるけど)(このままやったらアカンのやって)(うちが一番わかっとる)