どれだけ背伸びをしたって届きはしない。
そんな事は前からずっと解っていたのに、諦めきれないのは何故だろうか?
この人と対等の立場に居られれば、どれだけ幸せだったのだろう。
あと半年とちょっと、未熟児でもよかったから早く生まれてきていれば、今よりも対等の立場に立って居られたのじゃないのだろうか?
考え出したら限がない事ばかり考えてしまう俺は弱虫だ。
でも、俺はそれほどこの人に依存してしまっている。
どうしようもない事ばかり考えているから、不安にさせてしまうし、傷付くような事ばかりを言ってしまう。
本当にこの性格が嫌いだ。
性格だけじゃない、この人を傷つけてしまう自分自身が嫌で嫌で堪らない。
治そうと思うのに思ったように治せない。
どうしたらいいのか自分自身解らない。
あの夏の日。
俺は一番言ってはいけない事を言ってあの人を責めて傷付けてしまった。
あんな事を言うつもりなんかなかったのに、どうして俺はあんな事しか言う事が出来ないんだろう?
「同じ場所にもう二度と立つ事は出来へんのにッ…!何で千歳先輩になんかに譲ったんですか!」
「光…、」
「一緒にプレイ出来る思て、俺がどれだけ楽しみにしとったと思っとんねん!」
準決勝に破れた事は、本当は無茶苦茶嫌だった。
もう二度とこのメンバーで、この場所で、この人と一緒にプレイする事はないのだと言う現実を突きつけられて泣きたくなった。
この学校に居るうちは来てくれる、高校に行っても遊びに来てはくれるだろう。
だけど、そんな事よりも重要な事がある。
俺はこの人と一緒にプレイしたかった。
勝てない試合だったとしても、この人と今、一緒にプレイするという事に意味があるのに、全然解ってくれなかった。
「何で譲ったりしたんや…!」
「しゃーないやろ、強いもんが試合に出る。少しでも勝てる見込みがあればそいつが試合に出るんは当然の事や」
「俺は負けてもええから謙也さんと試合したかった!」
「それはただの光の我侭や」
今でもあの時の気持ちに偽りはない。
先輩等が、謙也さんがこの部を去ってから、この気持ちは止まる事なんか無くって、寧ろ強くなっていっとる。
追いつく事なんか絶対に出来ないから、
せめて少しの間だけでも同じコートに立って、同じ快感を味わって居たかった。
――――――光ー、はよしな部活遅れてまうでぇ?
耳から離れない声。
太陽みたいな笑顔。
もう二度と同じ時間が回ることはない。
(我侭でも良かったんや、俺は謙也さんと試合したかった)(最後くらい、我侭言わせて欲しかったんや)