暗くて暗くて、光だけ求めて手ぇ伸ばして。
真っ暗闇の中じゃ、ミジンコみたいな光も見えへんかった。
苦しいな、嗚呼、独りなんやって、そこで初めて気が付いた。
バカみたいに、ホンマバカみたい思えた。
自分の性格が引き金やったのに、そんなんも認めんと誰かに助けて欲しいって思うて。
アホみたいやな、って思って、真っ暗闇の中で泣いた…、と思う。
自分の手も足も身体も分からん中で、泣いてるかどーかっちゅーことなんわからんかったから。
そんな状態が何年も何年も続いて、俺はある日誰かに腕を引っ張られて薬品の匂いがする場所に連れて行かれた。
多分、病院なんや。
微かに聞こえる声の中で、俺を病院に連れてきたんが兄貴やって事がわかった。
俺が小さいときから、何かと兄貴は俺を可愛がっとったから、心配になって連れてきたんやと思う。
親は忙しいし、俺のことほったらかしやし、必然的に連れて来るんは兄貴になってたやろぉけど。
(何話しとんねんやろ?…まったく聴こえへん)
何分か話してから、今度は俺と然程大きさの変わらん手に引っ張られてまたどっかに連れて行かれた。
「なぁ、なんも怖いことなんかないで、だいじょーぶ!」
「ハ?」
「え?…ああ、いきなしごめんなー。おやじにたのまれてん!」
「なにを…、」
「自分のめんどー見るって!」
意味分からへんしって正直思ぉた。
何処の誰かも分からん奴に行き成り大丈夫とか言われて、不快な顔せぇへんヤツなんか居らんやろ。
「変な気ぃとかマジいらんから」
「変な気ぃとちゃうし!オレしょうらい医者になるからありがたく思えや!」
話しとっても意味分からんことしか返して来ぉへん。
バカなんやないかって思う以上に、こんなヤツに俺のこと任せるとかココの医者はどないなっとんのかって思った。
「アンタバカでしょ」
「ばかとちゃうわ!」
「それがバカっぽい」
「ムキー!!」
ちょっとオモロイって思った事は言わんとことか、ちょっとどんな顔しとるんか気になったとか、
そないなこと思うてないことにした。
(治るかな、)(治るよな、)