変な夢を見た。
その世界には俺一人しか存在しなくて、真っ暗な時と真っ白な時が存在する。
多分、それは朝と夜って事なんだろうけど、夕方とか、明け方とかそんな中間の時間は存在しなかった。
急に真っ白な空間から真っ暗な空間に変わってしまう。
それでも、不思議と目はその空間にすぐに慣れて、どっちの方向に進まないといけないかとか、そこに何があるかとか何故か分かっていた。
存在するのは俺一人だけって思っているけれど、人間とか、動物って言う部類で括られるものが存在しないだけ。
植物は存在する…と思う(歩いていると草を踏む感覚が存在するからあるんだろう)し、川の流れている音は聞こえる、土だって、岩だって存在している。
でも、そこに誰かの声がする事はない。
聞き取れるのは風が葉を揺らす音だったり、河の流れる音だけ。
まぁ、歩けば足と地が擦れる音はするし、手を叩けば渇いた音もする。
最初のうちは楽しんで居たけれど、だんだん同じ事の繰り返しをしていれば飽きて来るし、逆にどうやって抜け出せばいいのかわからなくなった。
必死にもがいて目が覚めた時には俺の身体は汗でぐっしょり濡れきっている。
体内にある水分を全て使い切っているんじゃないかと疑うほどの汗の量。
そして決まって俺は泣いている。
恐い訳ではない、何かに追いかけられて殺されかけている訳でもない。
それなのに、不思議と涙が止まらない。
(嗚呼…また同じ夢の繰り返しや、)
何時からか眠るのが恐くなった。
あの夢を見るのが恐くて、
あの夢を見続けなければならないのが恐くて、
目が覚めた時に泣いている自分が恐くて、
自分ではどうしようもない。どうやったら見なくて済むかなんか分からない。
自室のカーテンを開ければもう夜が開け、朝日が昇っていた。
(謙也さんに会いたい…、)
目を閉じれば脳裏に浮かんでくるのは優しい笑顔で、必要以上に声が聞きたくなった。
(その温かさで、)(その声で…、)