浮　気　な　彼　氏

「　ち　ぃ　な　ん　か　嫌　い　」

放浪癖とか、浮気癖とか、そんなんちぃの癖全部含めてもうなんか呆れてきてしもぉたから、気ぃ緩めた瞬間に言うてしもた。
言うんは別にええねん。
けど、そのシチュエーションがもぉ最悪。
さぁ今から恋人同士の営みを始めよか！って時に言うてしもた。
やからかは知らんけど、プッツン来てちぃは怒って出て行ってしもぉた。
自分で言うた発言やったのに、うちもわけわからんくなって、もう頭真っ白。
それでも取り合えず帰って来たちぃに絶対に謝ろって決心して、ちぃの布団に包まりながら帰るん待っとった。
待っとったんに、その日ちぃが自宅に帰って来る事なんかなかった。
多分、浮気相手の所にでも行っとるんやと思う。
この前見かけたちぃのクラスで綺麗やって言われとる子のところかな、とか眠れん頭で考えて、朝チュンや…。
鏡で見た肌はちょっとやのぉて結構荒れとるし、目ぇんか充血しとる。
コンディションは勿論最悪。
でも、学校行ったらちぃに会えるかもしれへんって淡い期待して行くしかなかった。

「アレ…？クラどないしたん！！」
「あ…謙也に光」
「部長、顔色ごっつ悪い…」
「え…、ホンマに？なんでやろー？」

誤魔化すために色んな嘘吐いた。
うちの事心配してくれとる謙也と光には申し訳ないと思たけど、うち等の問題に首を突っ込ませる訳にはいかへん。
飛び火してもーて、二人も喧嘩してまうかも知れへんし…。
余計な心配すんなって怒られると思うけど、やっぱり解決するのは自分の手やないといやや。

朝練はない日やったからそのままクラスまで行く。
途中でちぃのクラスの前通る事になるやろぉけど、きっとまだちぃは来てへん。
喧嘩した時間も時間やったし、どっかの女の所に行ったんやったとしたら…、まぁヤってへんわけないやろぉしな。
寝るん遅くなっとるやろ。

その日の昼休み。
運悪くうちはちぃと誰かも知らへん女がキスしとる場面に出くわした。

泣きたなった。

ちぃがうち以外の人とキスしとってもフレンチキスやったら許してやろって思うてたんに、目の前の二人がやっとるんはディープキス…。
実を言えば、うちはまだちぃにされた事ない。

負けた気がした。

容姿やって性格やって誰よりも勝っとる自信あったのに、やっぱり遊び惚けとるようなギャルの方がちぃはええんやろか？
真面目に優等生しとって常に生徒の規範であり、部長としての威厳を守っとるようなうちやったらアカンのやろか？

「ちぃなんか死んでまえ」

今にも行為に移ろうとしとる二人に遠慮なしにズカズカと歩いて近付いて、暴言を吐く。
女の方はポカーンって開いた口が閉まらへんみたいやった。

正直言うて笑える。

ちぃは一瞬ビックリしたような顔したけど、それも一瞬ですぐに普段の顔に戻る。

「どげんしたと？」
「そのまんまや」
「めずらしか事もあるもんばいね」
「もうええから、別れよーや」
「…ハ？」
「うちと別れてその子と付き合えばええんとちゃうん？」
「クラ何言うとっとね…、」
「ほな、さいなら」

アタシは戦線布告する

欲しいんやったら

生半可な感情だけじゃ

許さへん